前回のおさらい

前回の記事では、塩漬けポジションを処分する相殺決済(v1.30)と勝ちポジトレール(v1.31)を入れて、ついでに運用モニターまで自作したことを書いた。あれから2ヶ月。今日で運用開始から7ヶ月半になる。

この2ヶ月は、相場が動いた。7月末に163円台だったUSD/JPYが、今は153〜155円台。約10円の円高だ。グリッドEAにとっては稼ぎどきでもあり、塩漬けを作る季節でもある。実際にその両方が起きたので、今回は良いほうも悪いほうも全部書く。


7ヶ月半の成績

まず数字から。運用開始(1月末)から今日までの月別損益がこれ。数字はすべてスワップ(金利)と手数料を差し引いた純額だ。

確定損益 決済回数
2026年2月 +7,261円 468回
2026年3月 +3,344円 399回
2026年4月 +1,321円 274回
2026年5月 +998円 294回
2026年6月 +1,390円 211回
2026年7月 +2,296円 451回
2026年8月 +1,690円 150回
2026年9月(16日まで) +4,028円 287回
累計 +22,328円 2,534回
  • 勝率: 70.0%(1,774勝 / 2,534回)
  • プロフィットファクター(総利益÷総損失。1を超えていれば黒字): 1.63(総利益57,681円 / 総損失35,353円)
  • 入金1万円 → 出金1万円(元本回収済み)→ 現在残高 22,257円

前回(7月10日時点)は累計+14,862円・1,784回・勝率69.8%・PF1.69だった。この2ヶ月で+7,466円・750回積み上がった計算になる。PFは1.69から1.63へ微減。これについては後で触れる。

📡 この数字はすべて自作の運用モニターで毎時自動更新・公開中。最新の成績はこちらでいつでも見られます → GridWalker運用モニター


9月に伸びた理由

9月は16日までで+4,028円。半月で8月(+1,690円)の2倍以上、2月以来の伸びだ。

理由は単純で、相場が動いたから。前回「春以降はレンジ気味で値動きが小さかった」と書いたけど、7月末に163円台だったドル円が今は153〜155円台。この約10円の円高で、ようやく値幅が戻ってきた。

グリッドEAは、相場が上下に振れるたびに片側のポジションを利確して稼ぐ仕組みだ。だから動いてくれないと何も起きない。8月は決済150回と運用開始以来もっとも少なかった。9月に入って287回に戻り、損益も一気に伸びた。それだけの話だ。

逆に言えば、9月の数字はEAが賢くなったからではない。相場が動いたから決済が増えただけ。相場が止まればまた月+1,000円台に戻る。それがグリッドEAというものだと思っている。


「勝率70%」の中身

勝率70.0%。数字だけ見ると立派だけど、この数字を自慢する気はない。

平均利益と平均損失を並べてみる。

指標 数値
平均利益(勝ち1回あたり) +32.5円
平均損失(負け1回あたり) -46.5円

1回の負けのほうが、1回の勝ちより大きい。 勝ちは小さく、負けは大きい。いわゆる損大利小の構造だ。

なぜこうなるかというと、グリッドEAは「小さく利確を繰り返し、逆行したポジションは含み損のまま抱える」設計だから。勝ちは早めに確定するので回数が多く、負けは相殺決済でまとめて処分されるときに大きめの金額で確定する。勝率が高いのは構造上そうなるだけで、相場を読む力があるわけじゃない。

ざっくり言えば、勝ち3回(+97.5円)は負け2回(-93円)でほぼ帳消しになる。つまり6割勝ってやっとトントン。70%はそこから1割上に乗っているだけで、余裕があるとは言いがたい。勝率だけを見てEAを評価してはいけない、と改めて思う。


相殺決済は実際にこう動いている

前回入れた相殺決済(v1.30)が、この2ヶ月でどう動いたか。運用モニターの直近決済30件を眺めると、はっきりした特徴がある。決済がほぼすべて、同じ時刻に2本セットで行われている。

実例を3つ。

決済日時 決済した建玉 差引
9月15日 11:18〜11:24 買い0.74ロット +470円 + 買い0.37ロット -308円 +162円
9月14日 14:03 買い0.74ロット +382円 + 買い0.63ロット -356円 +26円
9月14日 03:58 買い1.25ロット +244円 + 買い0.96ロット -46円 +198円

ロット(取引量の単位)の大きい勝ちポジションに利益が乗ったところで、沈んでいる負けポジションを一緒に処分している。「勝ちを1本ずつ利確する」のではなく、「勝ちで負けを引き取らせて処分する」動きだ。

差引がプラスなら実行、というルールなので、+26円のようにギリギリで通っているケースもある。1本ずつ見れば+382円の利確を-356円の損切りで食い潰しているように見える。でもこれで沈んでいた1本が消えて、含み損とマイナススワップの垂れ流しが止まる。利益を取りに行く動きではなく、塩漬けの在庫処分と言ったほうが近い。

さっき保留にしたPFの微減(1.69→1.63)は、たぶんこれが理由だ。含み損のまま置いておけば確定損失にはならないが、相殺で処分すれば損失として計上される。数字としては悪く見えるが、口座の健全性としては逆だと思っている。


深すぎる1本を救う機能を足した(v1.32)

相殺決済には、運用してみて分かった弱点があった。「勝ち1本 : 負け1本」の組み合わせしか作れない。

相殺は差引プラスが条件だ。だから負けが深すぎると、どの勝ち1本を持ってきても釣り合わず、一番深く沈んだ1本が毎回スキップされる。浅い負けから順に処分されていって、最後に一番重い1本だけが残り続ける。本当に助けたいのはその1本なのに。

そこで9月3日に本番へ入れたのがv1.32のDeepRescue(深い塩漬け救済)

  • 200pips(pipsは値動きの単位。USD/JPYなら1pips=0.01円)以上沈んだポジションの中で、最も深い1本を対象にする
  • 勝ちを複数束ねて、その1本の損失を埋められる組み合わせを作る
  • 束ねた合計がプラスになるときだけ実行

つまり「1対1」だった相殺を「多対1」に拡張した形だ。

ただし、この機能で一番大事なのは救済ロジックそのものではなく、ゲート(発動条件)のほうだった。「勝ち1本で片付く相手には手を出さない」という条件を入れないと、勝ち1本で処分できるはずの負けにまで複数の勝ちを束ねてしまい、通常の相殺が回らなくなる。実際、このゲートなしでバックテストを回したらPFが1.33から1.10まで悪化した。機能を足して成績が落ちるという、いちばん避けたいパターンだ。

ゲートを入れた最終版のバックテスト結果(2026年7月20日〜9月3日・モデリング品質90%)はこう。

条件 結果
救済OFF 従来版(v1.31)と完全一致
救済ON 純益+184.41 / PF1.30 / 最大ドローダウン4.96%
救済の発動回数 3回(3回ともプラス着地

救済OFFで従来版と完全一致するのは、既存の動きを壊していないことの確認。救済ONでも純益・PF・最大ドローダウン(資産のピークからの落ち込み幅)がほぼ同等というのがポイントで、この機能はPFを上げるためのものではない。通常運転を邪魔せず、置き去りにされる1本を減らすためのもの。成績は変えずに口座の中身を軽くする、という位置づけだ。

ついでに9月5日にv1.33を入れたけど、これはログが肥大した問題の修正だけ。相殺の空振りメッセージが毎ティック出て、9月4日は1日で61,704行・34MBまで膨らんでいた。売買ロジックは1行も変えていない。


一番深い1本は、42日目に処分された

前回の記事の時点で気になっていたのが、7月30日に163.545円で建てた買い0.07ロットだった。これがどうなったかを先に書く。

9月10日21時47分、154.322円で決済された。-922pips、金額にして-646円。保有42日だった。

そして処分したのは、DeepRescueではない。従来の1対1の相殺決済だった。MT4のログにこう残っている。

役割 内容
勝ち #88635598 買い0.96ロット +737円
負け #87552119 買い0.07ロット -646円(-922pips)
差引 +91円

なぜ1対1で足りたのか。沈んだ深さ(pips)と、損失の金額は別物だからだ。この建玉は0.07ロットと小さかったので、-922pipsも沈んでいるのに金額では-646円にしかならない。0.96ロットの勝ち1本で釣り合ってしまった。

これはv1.32のゲートが設計どおりに働いた結果でもある。「勝ち1本で片付く相手には手を出さない」という条件があるので、DeepRescueは手を出さず、通常の相殺に道を譲った。

実際、9月3日にv1.32を本番へ入れてから今日まで、DeepRescueの発動ログは1件も無い。作った機能が一度も動いていないことになる。ただこれは失敗ではなく、出番が来ていないだけだ。DeepRescueが動くのは「どの勝ち1本を持ってきても釣り合わないほど穴が大きいとき」と決めてあるので、1対1で片付くうちは黙っている。


正直、もっと早く入れるべきだった

うまく片付いたように書いたけれど、反省がある。v1.32の発想は、もっと早い段階で入れておくべきだった。

今回助かったのは、対象が0.07ロットと小さかったからだ。-922pipsまで開いても金額は-646円で済んだので、勝ち1本で拾えた。これがもっと大きなロットだったら、同じ深さでも金額は数千円になる。1,000pips近くまで開いてしまうと、それを埋めるのに必要な勝ちが現実的でない大きさになる。 相殺も救済も、原資は「同じ側に乗っている勝ち」でしかないからだ。

含み損への対策は、含み損が小さいうちにしか安く打てない。深くなってから機能を足しても、埋めるコストはもう膨らんでいる。今回はたまたま間に合っただけで、間に合わない形も普通にあり得た。


2本目が、いま作業中

次に深いのは、同じ7月30日の18時48分に163.348円で建てた買い0.10ロット。現在155円台なので約-815pips、金額にして-815円ほど沈んでいる。

9月10日に1本目を片付けた勝ちが+737円だったので、この2本目を同じやり方で拾うには、もう一回り大きな勝ちが要る。ログにも「組める負けがありません。条件が変わるまで待機します」というメッセージが繰り返し出ていて、待っている状態がそのまま見える。

片付く道は2つある。1対1で拾えるだけの大きな勝ちが乗るか、勝ちが細かいまま溜まってDeepRescueが束ねるか。どちらが先に来るかは相場次第だ。


残高22,257円の内訳

最後に口座の中身。「残高22,257円」という数字だけを見ると順調に見えるけど、実際に引き出せる額はそれより小さい。

項目 金額
残高 22,257円
ボーナスクレジット 2,939円
含み損 -5,804円
有効証拠金 19,392円
今すぐ引き出せる見込み額 約16,453円

用語を補足しておく。ボーナスクレジットはXMTradingが付与する証拠金で、取引には使えるが出金はできない。有効証拠金は、残高にボーナスと含み損益を足し引きした「今この瞬間の実質的な口座価値」。そこからボーナスを除いた19,392−2,939=約16,453円が、今すぐ引き出せる見込み額になる。

含み損-5,804円は、確定利益+22,328円の約26%にあたる。上に書いた2本目を筆頭に、円高で沈んだ買いポジションがそのまま乗っている。

つまり、投入1万円に対して手元に戻るのは、すでに出金した1万円+口座の約16,453円=約26,453円。約2.6倍だ。残高で計算するより一段低い。

残高と有効証拠金の差が、両建てグリッドの本当のコストだと思っている。利益は確定するたびに残高に乗るが、その裏で沈んだポジションの含み損は残高に映らない。残高だけ見て「増えた」と喜ぶと、実態を見誤る。


今後の方針

変わらない。出金しない。放置。複利に任せる。

見どころは2つ。ひとつは2本目がどちらの方法で片付くか。1対1で拾える大きな勝ちが先に来るのか、それともDeepRescueが初めて動くところが見られるのか。もうひとつは、円高がこのまま進んだ場合に含み損がどこまで膨らむか。

数字は運用モニターで毎時晒している。うまくいっていない部分も含めて隠しようがないので、引き続き見守ってほしい。

※グリッド・マーチンゲール型EAは相場急変時に大きなドローダウンが発生するリスクがあります。当記事は特定の投資手法を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で。


関連ツール

関連記事